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仙台高等裁判所 昭和57年(ネ)508号 判決 1984年4月20日

控訴人(原告) 阿部稔

控訴人(原告) 高橋光治

右両名訴訟代理人弁護士 渡部修

被控訴人(被告) 仙南信用金庫

右代表者代表理事 渡辺佐男

右訴訟代理人弁護士 太田幸作

松倉佳紀

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人が昭和五三年六月一五日本郷菊男に対し証書番号八〇三九七〇四に基づき貸付けた四〇〇万円について、控訴人らに連帯保証債務が存在しないことを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張は左記のほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(控訴人らの主張)

一、仮定的に要素の錯誤を主張する。

仮に被控訴人の側に包括的根保証をする意思があったとしても、控訴人らは、乙第二号証信用金庫取引約定書はあくまで乙第五号証の一〇〇〇万円の消費貸借証書の付随書類にすぎず、それに署名押印しても自分らの連帯保証の対象は一〇〇〇万円にすぎないと考えていた。もしそれが包括根保証の契約のものと知っていたなら、決して連帯保証をするつもりはなかった。したがって、乙第二号証に署名押印したのは要素の錯誤に基づくものであった。しかも、控訴人らは一〇〇〇万円に限定してしか保証するものでないことを被控訴人の担当者佐藤富雄に表明しており、その意味で右は単なる動機の錯誤にすぎないものではない。

二、仮定的に次のように主張する。

主債務者の本郷菊男は特定かつ具体的な土地建物用資金を借用するためにだけ限って控訴人らに連帯保証人になってもらったのであり、佐藤富雄もこのことを知っていた。したがって、佐藤としては、乙第五号証のほか乙第二号証にまで控訴人らの署名押印を取る必要があるなら、控訴人らに不意打を与えないために同号証の内容をよく説明し、特に最後に印刷してある包括的根保証の文言を示して理解を求めるべきであった。しかるに、佐藤が全くこれをしなかったのは信義則違反であり、乙第二号証に右の包括的根保証の記載があることを理由に控訴人らに責任を追及することは権利の濫用である。

(被控訴人の主張)

控訴人らの主張はすべて争う。

理由

当裁判所は控訴人らの本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は左記を付加するほか原判決の理由と同一であるからこれを引用する。

乙第二号証信用金庫取引約定書に記載された条項はいわゆる普通契約約款であり、契約当事者が右条項をいちいち具体的に認識しなくても、これをすべて承認して契約したものと認められるものである。したがって、控訴人ら主張の要素の錯誤を容れる余地はないといわねばならない。

また、右のように、契約当事者は約定書記載の各条項をすべて承認して契約したものと認められるのであるから、当事者の一方が相手方に対しその内容を具体的に説明しなければならないものではなく、右説明をしないからといって信義則違反になるわけではない。また、被控訴人の乙第二号証記載の条項に基づく権利の行使(控訴人らに対する連帯保証人としての責任の追及)をもって権利の濫用と認めるべき特段の事情は本件において認められない。

控訴人らの主張はいずれも採用できない。

よって、原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤幸太郎 裁判官 石川良雄 裁判官宮村素之は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 佐藤幸太郎)

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